歌に感情を乗せる
恣意的な感傷に涙しちゃって
全部貰った感情だ
持続できなくってまた踊った
音楽があって良かった
感情を呑み込んでくれるから
叫んでもこの世界が動かないことを教えてくれるから
儚い空だ
闇を光に塗り替えたくて
誰かが心を覗いても
見えないよ、それは君の光だ
誰かが心を叱っても
知らないよ、それは半分嘘だ
でもそれだけじゃ足りないって
心のどこかわかってる
好きも嫌いも楽しめるホールへ さあ
舞踊れほら一般人も
夢見た先を生きよう!
期待された正解なんて
丸めて過去に捨てちゃおう
声のする先
夜も、朝も、月の落ちていった地平を眺め、ただ波に攫われていた。
同じ波が来ることを、ずっと待ち望んでいたのかもしれない。
僕は波に、思考や感情を何度も乗せた。
その分空は輝いた。
僕は嬉しかった。だが、それを繰り返すうちに、波は自分を嫌うようになった。
「君のためだけじゃないから。」
そう言われている気がした。
僕の体はたった1つしかない。
どんなに力を振り絞ろうと、幾多の美をその身に全て味わわせることなんて不可能に近い。だから僕は、心を磨いた。「何でも受け入れられますように」という、淡い期待の現れだった。
どこかから、「声は生きている証だ。」と言う声が聞こえた。
それは遠いようで近い、不思議な声だった。
今までの波とは違い、繰り返すことのない尊い声。
なるほど、確かにいくら心を磨こうとも、表現しなければそれは波にさらわれるだけの小石に過ぎない。存在証明を疎かにしていた。
そう感じた僕は、その声のする方向へ行こうと決心した。気づかせてくれたことに対して、お礼が言いたかったのだ。
地面に降り立った僕は、砂浜に足をすくわれそうになりながら、そこに立っている人間達を見た。誰一人、見向きもしていなかった。当然だ、僕はさっきまでただの石ころだったのだから。
見慣れない景色に、目眩がした。
地面に足をつけた人間達は、皆各々の星座をつくって輝いていた。
人々を掻き分けながら、声のする方へと向かった。しかし、不思議なことに、焦れば焦る程、声は遠ざかっていくようだった。僕は目を閉じ、耳を澄ました。
(君の見る世界を、1ミリでも近く見てみたい。僕の目はすぐ濁るから。そんな僕ごと見透かして、景色の一部にしてください。)
愚かで浅はかな願いだと思った。きっと声は、こんな僕を見捨てたに違いない。ずっと聞こえていた声が少し前から聞こえなくなっていたからだ。石ころの分際で、よくこんな願いを持てたものだと、自分を責めた。閉じた目に、涙が浮かんだ。
そっと、頭に何かが触れた。それは優しくて、とても甘い感触だった。きっと、僕はその時のことを、ずっと忘れないだろう。
涙で滲んだ視界を拭うと、その先には、目を細めて微笑む君が、何も言わずに僕の頭を撫でていた。
死ねって言われたし死ぬ準備する。
死ねって言われた。
正確には言われてないけど、
そんなことを言われた気がした。
動かない奴は悪だって。
働かない奴は悪だって。
悪だな、悪だわ。
悪は死すべきだわ。
不安
不安だ。僕は風俗嬢の気持ちにも警官の気持ちにも、渋谷をうろつく若者の気持ちにもなれない。羨ましい。あの人達の見る景色が僕には見えないから。なれるものには、なれるんじゃないか。好きなものを手にすることは、出来る。好きなものの中で眠ったなら、なんて幸せだろう。好きなもの。好きなもの。
眠れない僕の回想。
世界の悲しみを一度に引き受けている感じがする。
僕が幸せになって、相対的に不幸せになった人を僕は知っている。
僕は親指だ。ずっと異端なんだ。
僕は察することが出来ない。
僕は目の前のことしか出来ない。
人生。人生で最初にこさえた名前。
それだけが僕の全てだ。
ごく普通の人間には興味がない。
泳げない。教頭の顔を蹴った。
暴れた。背浮きが出来なかった。
忘れ物が多かった。何度も、立って授業を受けさせられた。
なんで皆こんなに怒るのかわからないので、
しゅんとしたり泣いたり頭の中の別世界に逃げ込んだりした。
同級生にもたびたび怒られた。
怒られるのが日常茶飯事になっていた。
校庭に咲く花が好きだった。
飼育している鳥が好きだった。
皆の分のゴーヤの種を集めた。
音楽室の、ツリーチャイムが好きだった。
バッハとかの自画像は、少し怖かった。
踊り場の、手すりのとことか好きだった。
雲梯のスタート地点とか。
もっと戻ろう。
馴染めなかった。
日本昔ばなしのEDとか好きだった。
弟を引き連れて公園でいっぱい遊んだ。
ゲームのルールを勝手に作って、その中で遊んでいた。
目の前の公園が全てだった。
祖父母が家に来た時、藤一番に連れていきたくて歩いていったんだけど、遠くて途中で泣いた。
水風船を買って貰えた時は嬉しかった。
店が暗かったから、きっとワガママ言って閉店後に買いに行ったんだね。母さんごめんよ。
ばあちゃん家行く時は、ちゃんと信号を守る道で行った。
危なっかしくてしょうがなかったんだと思う。
ヨーヨーで窓ガラスを割った。
襖なんて穴が開いて貫通してた。
でも楽しかった。
そんなところかな。じゃーね。明日の僕も、幸せになれるといいね。無理しないでね。またいつか会おうね。ばいばい。